(2024年6月最新)CAD/CAM冠と全部金属冠(金パラ)の利益比較

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令和6年6月1日以降に実施される診療から改定後の基準/点数が適用されます。

今回からCAD/CAMインレーの光学印象が保険収載となったことで、口腔内スキャナー(IOS)を所有されていた医院様は続々と厚生局への届出を提出されているようです。(施設基準に係る届出書はこちらからダウンロードできます)

直接法が保険適用となることでもちろん保険点数の算定にも変化はありますが、何といってもチェアタイムが大幅に短縮される点が大きいのではないでしょうか。印象材や石膏作成の時間が無くなるだけでなく、模型の宅配も無くなることで郵送時の破損リスクも無くなります。今はまだ間接法のみとなっているCAD/CAM冠にも、近いうちに光学印象が保険適用となりそうですね。

そんな中で、今回の診療報酬改定では材料料にも変更がありました。金属価格のボラティリティが大きい昨今ですが、最新の診療報酬点数におけるCAD/CAM冠と金属冠の算定点数はどのように変わったのでしょうか。そして、その結果それぞれの手残り利益がどうなっているのかを比較検証してみたいと思います。

まずは、大臼歯の歯冠修復においてCAD/CAM冠用材料(Ⅲ)と金銀パラジウム合金で治療した時の保険点数を比較してみました。

結論から言うと、まだまだCAD/CAM冠の点数がFMCを大幅に上回ります。また、今回からクラウン・ブリッジ維持管理の対象となる歯冠補綴物から、全部金属冠が外されることになりましたので、ここでも100点の差が出ることとなります。

CAD/CAM冠
(材料区分Ⅲ)
全部金属冠
(金銀パラジウム合金)
歯冠形成(失PZ)166166
CAD/CAM形成加算470
印象採得6464
咬合採得1818
歯冠修復(材料料含む)1,5161,431
装着料4545
内面処理加算145
装着材料1717
Cr・Br維持管理料100(対象外に改定)
合計点数2,4411,741
Figure1. 大臼歯クラウンの保険点数比較

合計点数の差は700点という結果でした。円換算にしてCAD/CAM冠が全部金属冠を7,000円も上回ることになりますね。患者さんにとっては、たった2,100円多く支払うことで銀歯ではなく白い被せ物を入れることができるのはメリットではないでしょうか。歯科医院にとっては、実際に補綴物を製作する際の材料費がどれだけかかってくるかで手残りが決まります。

金銀パラジウム合金の価格は2024年時点でも非常に高く、1gあたり約2,200~2,300円で推移しています。仮にFMCで2g使用するとして、1本あたりの材料費は約5,000円となります。また、材料費の高騰が続いており、特に金やパラジウムの価格が世界市場の影響を受けやすいため、今後もさらに上昇する可能性があります。

Figure2. 金銀パラジウム合金価格の上昇要因

一方で、CAD/CAM冠に使用されている材料としては、主にチタンやレジンが利用されます。チタンの価格は、1gあたり約47円と非常に安価で取引されています​。従って、本来CAD/CAM冠1本当たりに必要な材料費は数十円から数百円と、非常にコストパフォーマンスが高いものになります。ただ、ご存知の通り保険適用となるCAD/CAM冠用材料は厳密に品質特性が決められているので、通常は材料メーカーが販売しているCAD/CAM冠用ブロック(5個入り)を購入することになります。ここでは、材料区分(Ⅲ)のブロック1本あたり約3,000円として検証したいと思います。

Figure3. 大臼歯1本あたりの材料費比較

整理しますと、

大臼歯CAD/CAM冠(材料区分Ⅲ)で得られる利益は=21,410円ー技工料

大臼歯全部金属冠(金パラ)で得られる利益は=12,410円ー技工料

ということになります。

一般的に、金属冠よりもCAD/CAM冠の方が技工料が高くなる傾向にはありますが、それを踏まえてもCAD/CAM冠の方が圧倒的に利益は多いことが分かりました。当社では、関西最安水準の技工料(大臼歯)で承っておりますので、是非ともお問い合わせください。

以上から、材料費の差額と保険点数の違いを考慮するとCAD/CAM冠の方が歯科医院に残る利益が大きくなる可能性が高いといえます。また、今回は金パラを2gで計算していますので、当然この量が増えれば増えるほど利益は下がっていきます。金属高騰がいつまで続くのかも不透明な中で、手残りがいいCAD/CAM冠をやらない選択肢は無いでしょう。ただし、技工料次第ではCAD/CAM冠の利益率も下がっていきますので、改めて今お取引されている提携ラボの基本料金を一度見直されることをお勧めします。

【補足】CAD/CAMインレーと金パラインレーの比較

大臼歯にインレーを入れる際の保険点数も比較してみました。特に、CAD/CAMインレーは光学印象加算もありますので、直接法と間接法による点数差にも注目です。(光学印象歯科技工士連携加算は加味していません。)

CAD/CAMインレー
(材料区分Ⅲ)
全部金属冠
(金銀パラジウム合金)
う蝕歯インレー修復形成120120
印象採得64
咬合採得18
光学印象100
歯冠修復(材料料含む)1,066901
装着料4545
内面処理加算145
装着材料1717
合計点数1,3931,165
Figure4. 小臼歯インレーの保険点数比較

合計点数の差は228点という結果になりました。円換算にしてCAD/CAMインレーが2,280円上回ることになりますが、CAD/CAM冠よりも点数差は出ませんでしたね。ただし、CAD/CAMインレーは点数というよりも口腔内スキャナー(IOS)で印象採取した際のチェアタイム短縮がかなり期待できます。保険CADに力を入れている医院様は、CAD/CAM冠で利益を取りに行くよりも前に、光学印象の環境を整えることを優先してみてもいいのではないでしょうか。

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