(2026年夏)脱メタルはどれだけ得か|金パラ逆ザヤと国の方針から見るCAD/CAM冠移行のメリット

歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)の告示価格は、令和7年3月から5期連続の値上げが続き、令和8年3月改定では4,779円/g(前回比+25.7%)と過去最大級の引き上げとなりました(出典: 中医協総会資料・令和8年1月16日)。

それでも逆ザヤは解消していません。保険医団体連合会の試算(2026年1月時点)では、大臼歯FMC1本あたり約6,328円の持ち出しが生じています。そして今年、国は「金属を用いない歯科治療への移行」を明言しました。

本記事では、金パラを取り巻く現状を整理した上で、CAD/CAM冠への移行が医院に何をもたらすのかを2026年夏時点の制度・数字で解説していきます。

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金パラを取り巻く現実 — 値上げしても逆ザヤが終わらない理由

保団連の試算(2026年1月)では、金パラの仕入実勢は5,610円/g。大臼歯FMC1本(金パラ使用量約3.5g)の金属代が約19,635円に対し、保険償還は13,307円で、1本つくるたびに約6,328円の持ち出しという状況でした(出典: 保団連)。

「四半期ごとに随時改定されるのだから、いずれ追いつくのでは」と思われるかもしれません。しかし現行制度には構造的な限界があります。

  • 随時改定は3・6・9・12月の年4回(かつての「±5%ルール」は2022年3月で廃止済み)
  • 改定価格の算定に使われる素材価格は改定の2ヶ月前までの平均値

つまり、金相場が上がり続ける局面では、告示価格は常に2ヶ月遅れで実勢を追いかけることになります。金地金は2026年7月現在23,000円/g超の史上最高値圏(出典: シカキン相場情報)にあり、次回の2026年9月1日改定で再び引き上げられたとしても、上昇が続く限りこのラグは埋まりません。

国は「脱金属」に舵を切った

もう一つ押さえておきたいのが、国の方向性です。上野厚生労働大臣は2026年1月20日の会見で、金パラ高騰への対応として「金属を用いない歯科治療への移行」を進める方針を明言しました。

令和8年度改定に見る「脱金属シフト」

・CAD/CAM冠の大臼歯適用が実質全面解禁(咬合支持の細かい条件を撤廃)
光学印象がCAD/CAM冠にも拡大(150点に増点)
CAD/CAMブリッジが新規保険収載(3,000点)
・局部義歯のクラスプ・バーは原則、貴金属以外の材料
・クラウン・ブリッジ維持管理料の対象から金パラ・銀合金の単冠を除外

白い補綴の適用は広げて点数を付け、金属側は対象から外す——制度は明確に「移行した医院が得をする」設計になっています。

CAD/CAM冠移行の5つのメリット

では、金パラ中心の診療からCAD/CAM冠へ移行すると、何がどれだけ良くなるのでしょうか。

① 材料価格リスクがゼロになる

CAD/CAM冠用材料(レジンブロック)には、金パラのような素材相場と告示価格の乖離=逆ザヤ構造がそもそも存在しません。作るたびに持ち出しが発生する不安も、9月改定の行方を気にする必要もなくなります。

② 点数面で優遇されている

CAD/CAM冠は1,200点(エンドクラウンは1,450点)に加え、光学印象150点などの加算が整備されています。大臼歯の適用が実質全面解禁されたことで、「保険で白い歯」を提案できる症例が一気に広がりました。制度が伸ばそうとしている領域は、点数もついてきます。

③ 光学印象で模型レス — チェアタイムとコストの削減

口腔内スキャナーがあれば、CAD/CAM冠・インレーは印象材も石膏模型も不要です。印象採得のやり直しリスクが減り、チェアタイムが短縮され、材料費・技工所への模型送付の手間も削減されます。

④ 患者さんに提案しやすい

「保険適用で白い歯にできます」は、銀歯を提案するより患者さんの同意を得やすい説明です。金属アレルギーの心配もありません。なお、大臼歯へのCAD/CAM冠は「強度が不安」と言われてきましたが、令和8年度改定の適用拡大は装着部位による保存期間等に有意差がないとする文献を根拠に行われており、国が耐久性を認めた形です。

⑤ 金パラ在庫の資産リスクから解放される

相場が動くたびに仕入れタイミングを悩み、在庫の評価損益に一喜一憂する——その管理コスト自体がなくなります。はい、金庫の中の金パラとにらめっこする時間は、もう診療に使えるのです。

移行の始め方

CAD/CAM冠への移行に、大がかりな準備は必要ありません。

  1. 施設基準(歯CAD)の届出 — 未届出の場合も様式の提出のみ
  2. CAD/CAM対応の技工所と連携する — 光学印象データでの依頼に対応できるか、材料・設計体制があるかを確認
  3. 大臼歯の単冠から始める — 適用全面解禁で症例を選びやすく、慣れたら「④5⑥」「⑤6⑦」のCAD/CAMブリッジへ

当社(大森技工所)は、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーをスキャンデータ(光学印象)でのご依頼を含めて対応中です。CAD/CAMブリッジも対応準備を進めています。金パラ中心の診療からの切り替えをご検討の際は、症例の進め方から技工料まで、お気軽にご相談ください。

まとめ

  • 金パラは5期連続値上げでも逆ザヤが続く。2ヶ月ラグの構造上、相場上昇局面では解消しない
  • 国は「金属を用いない歯科治療への移行」を明言し、令和8年度改定は脱金属シフトが鮮明
  • CAD/CAM冠移行のメリットは「材料リスクゼロ・点数優遇・模型レス・患者同意・在庫リスク解放」の5つ

制度と相場の両面から見て、臼歯部の保険補綴をCAD/CAMに移すことは、もはや選択肢ではなく経営判断として合理的な既定路線です。9月の随時改定を待つより、まず1症例から始めることをお勧めします。

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